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TECHNICAL NOTE / AUDIO

音声

声と空気を、聞き取りやすく。

音声担当は、話し声、音楽、環境音を収録してバランスを整えます。「音が入っている」と「内容が伝わる」の間に、たくさんの判断があります。

TRY IT / バランスをつくる音は再生されません
声の存在感
声が聞き取りやすいバランス

背景の音を控えめにすると、声に注意を向けやすくなります。

数値は学習用の相対量です。実際のdB・ラウドネス測定や聴覚特性を再現するものではありません。

01

マイクは、位置から考える

マイクの種類だけでなく、音源との距離や向きが収音を左右します。ピンマイクなら衣擦れ、屋外なら風、複数本なら相互の音の回り込みにも注意を向けます。

POINT

指向性は、音を拾う方向による感度の違い。狙った声だけを完全に切り離す機能ではありません。

02

ゲインとフェーダーを分けて考える

入力ゲインは、入ってくる信号を適切な大きさで扱うための調整。フェーダーは、複数の音源を混ぜるときのバランスを整えます。入力段で歪んだ音は、後段のフェーダーを下げても元に戻りません。

POINT

まず信号を健全に受け、次に音源の関係をつくる。メーターと耳の両方で確かめます。

03

ピークとラウドネス

ピークは瞬間的な信号の大きさを、ラウドネスは人の聞こえ方を考慮した音量感を扱います。ピークが同じでも、番組によって大きく聞こえたり小さく聞こえたりします。

POINT

日本のテレビ放送にはラウドネスの運用基準があります。配信など別の媒体へ、その値をそのまま当てはめないようにします。

04

返し・IFB・連絡系統

番組として視聴者に届ける音と、出演者に返す音、スタッフ間の連絡は役割が異なります。IFBでは、番組音声を返しつつ必要な指示を割り込ませます。

POINT

出演者が聞きたい音、視聴者に届けたい音、制作だけで共有する声。それぞれの行き先を整理します。

EVOLUTION

技術は、どう変わってきた?

年代は登場・普及の大まかな流れです。複数の方式は併用され、局や制作現場によって移行時期が異なります。

モノラル → 音声多重

一つの音から、左右・複数言語へ

モノラルは一つのチャンネル、ステレオは主に左右の関係で広がりを伝えます。音声多重ではステレオや二か国語などを扱えますが、二か国語の主音声・副音声は左右の広がりを作るものではありません。

現場で変わること

スポーツ中継では実況と会場の音を分けて収音し、伝えたい情報と臨場感を組み合わせます。モノラルにまとめても音が大きく変わらないか確認します。

アナログ処理 → DSP

ミキサーの中で、音を数値として扱う

アナログ入力をA/D変換し、デジタル信号処理でEQやダイナミクスを調整する構成が広がりました。1987年のヤマハDMP7は、シーンメモリーやモーター駆動フェーダーを持つ製品例です。

現場で変わること

保存した設定を呼び出せても、マイク位置や出演者の声は毎回異なります。入力段のクリップを防ぎ、呼び出し対象や例外設定も確認します。

2012年の民放運用開始

ピーク管理に、音量感の管理を加える

瞬間的な最大値と、時間を通して感じる音量は同じではありません。民放テレビでは2012年10月にラウドネス規準の運用を開始。日本のテレビ番組交換では平均ラウドネスの目標値−24 LKFSを基準とする運用があります。

現場で変わること

番組全体の測定と瞬間的なピークの両方を見る。短時間のメーター値だけで番組全体を判断せず、納品先の規準と測定条件を確認します。

多芯ケーブル → デジタル伝送・ネットワーク

音声を、多チャンネルのまま運ぶ

マイクごとのアナログ配線に加え、デジタル伝送やIPネットワークで多チャンネル音声を運ぶ構成があります。Danteは音声ネットワークの方式の一つ。AES67はIP音声の相互接続に関わる規格です。

現場で変わること

ケーブルが減っても、クロック、サンプルレート、遅延、経路の設定は必要です。DanteとAES67とST 2110は、同じ名称・同じ機能の規格ではありません。

スタジオ → 遠隔地との共同制作

返しを設計する:IFBとミックスマイナス

出演者は番組音や指示を聞きながら話します。IFBは番組の返しに指示を割り込ませる仕組み。ミックスマイナスは、相手へ返す音から、その相手自身の音などを除いたミックスを作る考え方です。

現場で変わること

遠隔中継では、自分の声が遅れて返ると話しづらくなります。放送に出す音と、出演者に返す音、スタッフの連絡音を別々に設計します。

放送局の年表と重ねて読む ↗

FIELD WORDS

まず押さえたい頻出用語

EQ
周波数帯域ごとのレベルを調整する処理。声の明瞭さや不要な成分の調整に使う。
HPF
低い周波数を減衰させるフィルター。振動や風の影響を減らすのに使うが、声の低域も変化する。
コンプレッサー
設定したしきい値などに従って信号の変動幅を抑える処理。入力段で既に歪んだ音の修復機能ではない。
リミッター
設定したレベルを大きく超えないよう制御する処理。信号経路や応答時間によって効果が異なる。
PFL
フェーダー手前の音を確認するモニター機能。番組出力へ混ぜる前に入力の状態を聴ける。
AUX
メインのミックスとは別の音の組み合わせを作る補助系統。返しや外部処理への送りなどに使う。
ミックスマイナス
相手へ返すミックスから、その相手自身の音声などを除く構成。遅れて自分の声が戻る問題を避ける。
ファンタム電源
対応するマイクなどへ、音声ケーブルを通じて電力を供給する方式。接続機器の対応を確認して使う。
dBFS
デジタル信号の最大値を0 dBFSとして表すレベル。アナログのdBuやラウドネスのLKFSとは基準が異なる。
トゥルーピーク
サンプル間も考慮して推定するピーク値。サンプル値だけの最大値とは区別する。
Dante
Audinateによるメディアネットワーク技術。対応機器間で多チャンネルの音声などを運ぶ。
AES67
IPネットワーク上の高品質音声伝送の相互運用に関する規格。対応モードと接続条件の確認が必要。
シーンメモリー
ミキサーの設定を保存・呼び出しする機能。呼び出す対象や、変更しない項目も管理する。
MADI
多数のデジタル音声チャンネルをまとめて伝送する規格。物理接続や対応するチャンネル数・サンプルレートを確認する。
AES3 / AES/EBU
基本的に2チャンネルのデジタル音声を伝送する規格。多数のチャンネルをまとめるMADIやIPネットワーク音声とは区別する。
ワードクロック
デジタル音声機器のサンプリングのタイミングをそろえるための基準信号。素材を識別するタイムコードとは目的が異なる。
インカム
制作スタッフが指示や状況をリアルタイムに共有する通話システム。有線・無線・IPなどの構成がある。
基本用語も含めて、用語集で検索 ↗

TOOLKIT

よく登場する機材と、その役割

現場で使う機材の種類と、機能を学ぶための製品例です。各局の採用機種・採用率を示すものではありません。構成やオプションは製品資料を確認してください。

ガンマイク

製品・構成の例:Sennheiser MKH 416

狙った方向の声などを収音するマイク。ブームやカメラ上など、用途に合わせて配置します。

選ぶ・運用するときの視点

向ければ遠くの声だけが拾えるわけではありません。距離、反射音、風防を合わせて考える。

ピンマイク

製品・構成の例:Sony ECM-77B(過去の製品例)

出演者の衣服付近に取り付け、声を近くから収音する小型マイク。

選ぶ・運用するときの視点

販売終了製品の例。衣擦れ、装着位置、ケーブル、電源方式を確認。マイク自体と無線送信機は別の役割です。

ワイヤレスマイク系統

製品・構成の例:Sony DWX / DWR-R03D

出演者側の送信機と受信機で音声を伝送し、移動の自由度を確保します。

選ぶ・運用するときの視点

周波数帯、同時使用本数、電波環境、遅延、電池を運用条件に合わせて管理。

デジタルミキサー

製品・構成の例:Yamaha DM7シリーズ

複数の音源を受け、EQ・ダイナミクス・送り先・ミックスをまとめます。

選ぶ・運用するときの視点

Broadcast Packageは追加機能。機種名だけで、必要な放送機能が標準搭載と判断しません。

返し・連絡・監視

製品・構成の例:IFB / インカム / ヘッドホン / ラウドネスメーター

出演者への返し、スタッフ間の連絡、番組音の確認と測定を分担します。

選ぶ・運用するときの視点

ヘッドホンの聴取とメーター測定を併用し、放送系統への不要な混入を防ぎます。

ON THE FLOOR

信号の流れと、本番までの仕事

マイク → 入力ゲイン → EQ/ダイナミクス → フェーダー → バス → 出力

代表的な流れを簡略化した概念図。実際の処理順序や分担は構成により異なります。

  1. 収音と入力を確認

    マイクを配置し、衣擦れや風、反射を点検。通常の声に加えて大きな声でも入力が歪まないか確認します。

  2. ミックスを作る

    声を中心に音楽・環境音の関係を決めます。EQやコンプレッサーを使う前に、位置と入力レベルを見直します。

  3. 返しを別に作る

    番組の出力とIFB・AUX・ミックスマイナスの送り先を分け、出演者ごとに実際の聞こえ方を確認します。

  4. 出力と同期を確認

    音声チャンネルの割り当て、ラウドネス、ピーク、左右、映像とのずれを確認。録音・送出先でも聴いて確かめます。

現場で起きることから考える

フェーダーを下げても歪む

マイク・受信機・入力ゲインなど、フェーダーより前の段でクリップしていないか確認。

中継先が話しづらい

自分の声が遅れて返っていないか、ミックスマイナスと返し回線を確認。

左右をまとめると音が痩せる

複数マイクの距離差や極性、位相関係を確認。ステレオとモノラルの両方で聴きます。

出典・さらに読む

資料確認日:2026年11月5日。本文は出典をもとに要約・解説しています。現場ガイドの追加資料は11月6日確認。